その子らしく・・

 幼稚園の頃、羽田空港に遠足に行った。そして帰ってきてから、みんなで空港の絵を描いた。ジャンボジェットの大きさや空港の大きさに子供ながらに感動したのだろう。当時の自分は用意された1枚の四つ切り画用紙では足りず、先生にお願いして4枚使って、のびのびと羽田空港を描いた。もちろん、他の子は1枚の画用紙の子が多かった。自分は幼稚園の1期生だったから、それが前例になったらしく、その後数年、6枚、8枚と好きな枚数で自由に表現することが出来ていた。
 それがある年から、お行儀よく1人1枚となってしまった。後で聞いた話だと「不公平だ」とある保護者から苦情が入ったからだそうである。
 小学校の時、いまでは何でそんなことをしようと思ったのかさっぱり思い出せないのだが、友達を誘って模造紙と工作用紙で「理想のまち」を作った。親が建築士だという影響もあったのか、建築のコンペに出すような都市模型の子供版だ。先生にお願いして毎日、放課後の教室に残り、工作用紙で家やビルやジェットコースターなどを作っては模造紙に張り付けた。模造紙数枚分になった理想のまちは、廊下の壁に画鋲で張り付け、「これは友達と作った理想のまちです」と説明をつけた。そして、数週間して気が済んだ頃、作った自分と友達で剥がしてゴジラのように壊し、最後はゴミにして焼却炉で燃やした。
 先生は、まちを作ることについては、ほめてもくれなかったけれど、ダメだとも言わなかった。何か他所から言われたかもしれないし、「そろそろ片付たら」ぐらいは言ったかもしれないが、うるさいことは一切言わず、自由に作ることを許してくれた。もちろん学校の成績にも関係はなかった。でも、自分は自分がやりたいことを最後までやりとげたし、とても満足できた。

 今の教育はどうなのだろう?その子らしく、その人らしく、と言っても、画用紙1枚分の個性なのだろうか、1枚で収まらない個性は許してくれるのだろうか。
 放課後、自由に工作を許してくれるのだろうか、それとも管理の都合でダメと言うのだろうか。その子らしく・その人らしく、と言いながら。

 気になって仕方がない。