はじまり・・

思い描く仕事の話。
 自分が障害者福祉の仕事を始めたのは1994年(平成6年)。今は2015年(平成27年)。すでに20年という日が過ぎた。行政が責任を持って措置する制度から、利用者が自由にサービスを利用できる制度を目指すという明確な目標があった時代からスタートした。あの頃は、行政は何をやっても民間の後追いで、在野の実践家が理想を語れた時代。自分達がイノベーターであるという自負と共に熱意を持って仕事が出来た。
 バブル時代が終わるとはいえ、周囲が受け取る報酬と、自分が今手にすることのできるお金のギャップという現実。何も変わらない社会。手がかりもなく、空回りしている感覚。理解ある人々の小さな輪の中での存在しかない自分。
 疲労感と無力感・・ここから去ろうと決めた時には、何の未練もなかった。
 新たな職場に移った時に、介護保険が始まった。措置から契約へ。対象者からお客様へ。情報テクノロジーが自家用車なみに普及する時代となり、複雑な制度設計が可能となり、誰でもどこでも同じサービスを受けられる福祉の時代が訪れた。サービスの適正な供給を可能にするためのケアマネジメントも始まった。全てが行政主導であった。
 人類史上経験したことのない超高齢化社会の到来に対して切り札として導入された介護保険制度であるが、どこか違和感を持ったまま少し離れたところに自分はいた。何もかもが少しづつ違う。
 2001年(平成13年)、人類は外宇宙への旅に出かけることはなかったが、日本の福祉制度は重大な転換期を向かえていた。
 この国の福祉は産業化を始めたのである。